【プレスリリース】これまで分解しないとされていた市販の釣り糸が海洋で生分解することを発見【5月15日(木)】

ゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)問題解決の決定打に

大学院理工学研究科の日向博文教授は、東京大学の伊藤耕三特別教授、安藤翔太特任助教らの研究グループに参画し、海洋では分解しないとこれまで共通認識されていた市販の釣り糸の中に、代表的な海洋生分解性ポリマーのセルロースと同等レベルで生分解する釣り糸が複数存在することを発見しました。

具体的には、市販されているナイロン6とナイロン6,6の共重合体の釣り糸の中で、共重合体の比率がある範囲に入る市販の釣り糸が、海洋中で生分解性ポリマーの標準物質であるセルロースと同程度の生分解性を示すことを世界で初めて明らかにしました。これは、ナイロンを非生分解性ポリマーとして扱ってきた教科書の記述や、高分子分野・水産業分野の共通認識が間違っていることを示し、これまでの常識を完全に覆すものです。

この発見を契機として生分解可能な釣り糸が世界中で盛んに利用されるだけでなく、漁網等の漁業系プラスチックの材料開発に展開が可能となることから、ゴーストギア問題の包括的解決が期待されます。

詳細はこちらからご覧ください。(愛媛大学HPへジャンプします。)

【プレスリリース】AIで川ごみを自動検出・分類する新システム「PRIMOS」を共同開発【4月16日(水)】

2025年4月14日から提供開始、八千代エンジニヤリング×愛媛大学

このたび、大学院理工学研究科の片岡智哉准教授と、八千代エンジニヤリング株式会社(本店:東京都台東区、代表取締役社長執行役員:高橋 努、以下「八千代エンジニヤリング」)が共同開発した、河川表面のプラスチックごみの量を把握するほか、AI によりごみの種類を自動で検出・分類する川ごみモニタリングシステムPRIMOS(Plastic Runoff Identification, Monitoring & Observation System)が製品化され、2025年4月14日より提供開始となりました。

※片岡先生の研究成果は、環境省・環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF21356444, JPMEERF20231004)の支援を受けて実施されたものです。

詳細はこちらからご覧ください。(愛媛大学HPへジャンプします。)

◆「PRIMOS」について詳しく知りたい方は以下も併せてご覧ください。

八千代エンジニヤリング株式会社 NEWS
AIで川ごみを自動検出・分類する新システム「PRIMOS」を共同開発~2025年4月14日から提供開始、八千代エンジニヤリング×愛媛大学~(別サイトへジャンプします。)

PRIMOS サービス紹介(別サイトへジャンプします。)
 
イメージ図(プレスリリース資料から抜粋)

『デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’24 /第30回AMD アワード』授賞式に森脇亮教授および工学部4回生丸井建さんが出席しました【3月25日(火)】

令和7年3月25日(火)、東京都内にて開催された『デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’24 /第30回AMD アワード』授賞式にて、森脇亮教授(大学院理工学研究科、地域レジリエンス学環、防災情報研究センター)および、森脇研究室に所属する工学部4回生の丸井建さんが登壇し、デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’24/第30回 AMDアワード「リージョナル賞」を受賞しました。

森脇教授および丸井さんは、森脇教授の研究室で開発された「みんなの防災アプリ」が「AMD アワード」に選出されたことについて、授賞式にてモノリス(盾)と賞状を授与されました。本アプリは、愛媛大学、西予市、イツモスマイル株式会社が行ってきた研究を基に開発されたものであり、共同での受賞となります。

本授賞式の模様は、「ニコニコ生放送」、「YouTubeライブ」にてライブ配信されました。

また、授賞式の後、愛媛大学にて、森脇教授および丸井さんより、仁科弘重学長へ今回の受賞について報告を行いました。

仁科学長から二人に向けて、「実用的な研究成果が求められる時代になっているので、今後もこういった高度な研究を続け、頑張ってほしい」とお祝いと激励の言葉がありました。

【参考】

森脇亮教授の研究室で開発された「みんなの防災アプリ」がデジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’24/第30回 AMDアワード「リージョナル賞」に選出されました
(※愛媛大学Webサイトへ移動します。)

「みんなの防災アプリ」受賞者(左から2人目が丸井さん、3人目が森脇教授)
受賞スピーチをする森脇教授
モノリスを授与される丸井さん
受賞者による記念撮影
仁科学長への報告記念写真

大学院理工学研究科の森脇亮教授の研究室で開発された「みんなの防災アプリ」がデジタル‧コンテンツ‧オブ‧ジ‧イヤ ー’24/第30回 AMDアワード「リージョナル賞」に選出されました

このたび、第30回AMDアワード「リージョナル賞」に大学院理工学研究科(地域レジリエンス学環、防災情報研究センター)の森脇亮教授の研究室で開発された「みんなの防災アプリ」が選出されました。

アプリには、地域の避難状況を一覧管理する「逃げ遅れゼロ」、家庭の備蓄品を管理する「備蓄品」、屋外防災無線を音とテキストで確認‧再生する「防災無線」、家庭の避難計画を作成する「避難計画」の機能があります。産学官連携による新たな防災モデルで地域社会への貢献度は高く、他地域‧分野への応用が期待されることが評価されました。

本アプリは、愛媛大学、西予市、イツモスマイル株式会社が行ってきた研究を基に開発されたものであり、共同での受賞となります。

受賞に関する詳細はこちらからご覧ください。(※愛媛大学Webサイトへ移動します。)

令和8年度愛媛大学工学部「建築・社会デザインコース」の設置(社会デザインコースの改革)について記者説明会を実施しました【12月16日(月)】

令和6年12月16日(月)、愛媛大学本部にて、令和8年度愛媛大学工学部「建築・社会デザインコース」の設置(社会デザインコースの改革)について記者説明会を実施しました。

記者説明会には、愛媛大学の仁科弘重学長、八尋秀典理事・副学長、森脇亮工学部長が登壇しました。
愛媛大学工学部は令和8年度に工学部工学科の社会デザインコースを再編し、建築系の科目を新設し、コースの名称を「建築・社会デザインコース」と改め、1級建築士の受験資格が取得できるカリキュラムを導入いたします。

これまで愛媛県内の大学には建築を学べる学科がなく、1級建築士資格取得に対応した教育コースの設立について愛媛県や県内建築関連団体等から建築系コース創設を求める要望書が愛媛大学に提出されていました。さらに、全国的に総合的なまちづくりやトータルな空間デザインへのニーズが高まっており、これに対応するために土木・建築・都市計画などの幅広い知見を有し、分野を超えて相互に会話が成立する技術者および設計者の養成を目指します。

※現在の社会デザインコースのカリキュラムは、1級建築士の受験資格の取得には対応しておりません。
 資格取得に対応するのは令和8年度入学生からとなります。

記者説明会の様子

 

大学院理工学研究科の伊賀陽太さんが「令和6年(2024年)土木学会全国大会第79回年次学術講演会」において「優秀講演者賞」を受賞しました【10月16日(水)】

令和6年9月2日(月)~9月6日(金)、東北大学川内北および川内南キャンパスキャンパスで開催された「令和6年(2024年)土木学会全国大会第79回年次学術講演会」において、大学院理工学研究科環境建設工学講座博士前期課程1年生の伊賀陽太さんが「優秀講演者賞」を受賞しました。

本賞は、口頭セッションにおいて優れた発表に対して贈呈されるものです。

受賞者 伊賀 陽太
演 題 感潮河川におけるマイクロプラスチックの一潮汐変動

令和6年度工学部教育貢献賞の表彰式を挙行しました【7月31日(水)】

令和6年7月31日(水)工学部長室で工学部教育貢献賞の表彰式が行われました。

工学部では、平成24年から学部教育において優れた貢献をした教員を表彰する制度を導入しており、今年度は、工学部への長年の根強い教育活動を称え、環境建設工学講座の坪田 隆宏 准教授と情報工学講座の王 森レイ 講師の2名に森脇 亮 工学部長から賞状と盾が授与されました。

【受賞内容】

「公共空間デザイン教育の設計と実践」  環境建設工学講座 坪田先生

社会デザインコースでは将来のまちづくりの中核を担うことができる人材輩出を目指しており、都市空間や社会の総合的なデザイン力の涵養に資する教育活動を実践しています。特に、坪田先生が取り組む「地域社会 デザイン演習(社会デザインコース必修)」では、都市の公共空間が担う2つの役割:移動(モビリティ)機能と滞在機能に着目し、実践的、かつきめ細やかなデザイン教育を実施している成果が高く評価されました。

「PBL型組込みシステム開発演習の教材開発と導入及びPBL型卒業研究の実施」 情報工学講座 王先生

文部科学省事業「成長分野を支える情報技術者人材育成拠点の形成(組込みシステム分野)」において、愛媛大学工学部を拠点として、実践的かつ革新的な教育を行い、本学の学生のみならず他大学の学生や県内企業の技術者のデジタル情報技術のスキル向上に多大な貢献をしており、その功績が高く評価されました。

授与されたトロフィー
左から神野FD委員長、坪田准教授、王講師、森脇学部長

大学院理工学研究科博士前期課程1年の井澤良太さんが第58回地盤工学研究発表会で優秀論文発表者賞を受賞しました【9月8日(金)】

令和5年7月11日から13日に福岡市(福岡国際会議場)で開催されました地盤工学会主催の「第58回地盤工学研究発表会」において、理工学研究科博士前期課程1年の井澤良太さんが「優秀論文発表者賞」を受賞しました。

本賞は、今後の地盤工学分野を担う若手技術者及び若手研究者の活性化、研究意欲の向上を目的として設立した賞であり、発表内容、発表技術、発表時間、質疑応答において優れた発表を行った35歳以下の技術者及び研究者に贈られます。

発表した論文題目は、「ラインレーザー法による堤防のパイピング進展に伴うパイプ形状の観察」です。この研究では河川堤防直下の地盤表面で起きるパイピング現象について、洪水経過に伴い変化するパイプの3次元形状を精密に測定する技術の開発を目的として、遠心模型装置を用いた実験が実施されました。ラインレーザーとカメラを組み合わせ、地盤表面の形状を精密に読み取る新たな技術が評価され、今回の受賞となりました。

受賞、おめでとうございます。

受賞した井澤さん
賞状

大学院理工学研究科の中畑和之教授が日本非破壊検査協会創立70周年記念最優秀解説賞を受賞 【6月6日(火)】

令和5年6月6日(火)、大学院理工学研究科生産環境工学専攻の中畑和之教授が日本非破壊検査協会 創立70周年記念最優秀解説賞を受賞しました。

創立70周年記念最優秀解説賞とは、日本非破壊検査協会の協会誌「非破壊検査」で過去10年の間に掲載された解説609編のうち、最も優れた解説に授与されたものです。

今回受賞した解説記事は「超音波非破壊検査へのデータ同化の導入 -大規模シミュレーションと多点計測データをつなぐ-」という題目です。超音波探傷等で計測される検査データと数値解析を融合させて、欠陥の形状や位置などを推定するための方法論とその事例について、わかりやすく説明をしたことが評価されました。データ同化はデジタルツインなどの構築に寄与し、次世代の非破壊検査手法としての応用が期待されています。

 

【研究紹介】河合慶有先生(理工学研究科生産環境工学専攻)

工学に興味を持ったきっかけは?
 幼い頃は、山や川に囲まれた環境で育ち、よく虫を捕りに行ったり、川で遊んだりしていました。身の回りに自然が多く、橋梁、トンネル、堤防やダム等の鋼やコンクリートでできた構造物が身近にある生活を送っていたからか、気がついたら大規模なインフラ構造物に興味を持っていました。そのせいもあってか、中学生の時には土木分野へ進みたいと心に決めていました。

河合慶有先生

 

大学の先生になろうと思ったきっかけは?
 大学卒業後、企業に就職し海外プラントエンジニアリング会社でシビルエンジニアとして仕事をしていましたが、そこで様々な経験をするうちに、自分の力不足を強く感じるようになりました。「このままでは駄目だ!」と一念発起し、大学時代の恩師の紹介もありシンガポール国立大学の大学院に進学しました。大学院にはシンガポール政府の奨学金を受給して進学しましたが、アジアトップクラスの大学で、欧米諸国、アジアの国々からの優秀な学生がひしめく中、とにかく必死に勉学や研究に励みました。
 英国、ドイツ、イラン、インド、ベトナム、インドネシアや中国など様々な国籍の学生が在学する環境で、様々な言語が飛び交い考え方の違いに触れ、ここには日本の大学環境では得られないものがたくさんあると感じました。語学力もそうです。異なる背景も持つ教員や学生と議論し研究を進めていくためには、より実践的な英語(グロービッシュと呼ばれる)を身につける必要があると痛感しました。Ph.D.取得後は、コンクリートの研究を続けながら世界級キャリアを積み重ねるとともに、自分のようなグローバル人材を育成したいとの思いから大学教員になりました。

研究内容は? 
 鉄筋コンクリートの耐久性が専門です。近年は、微生物を用いたひび割れ補修や腐食抑制技術について研究しています。
 「ところ変わればコンクリートも変わる」これは大学時代の恩師がおっしゃっていたことです。コンクリートはそれぞれの地域で調達できる材料を使用します。いわば地産地消です。そのため、国、地域でコンクリートに含まれる材料は変わるのです。加えて、コンクリートは水の次に地球上で使用されてきた材料で、世界中どこにでもあります。つまり、国際学会に行くと「様々な」コンクリートを研究しているいろいろな研究者と語らうことができ、新たな繋がりがどんどん増えていきます。コンクリートの研究を通じて国内外の多様な研究者と出会うことも研究のモチベーションの一つです。
 卒論の頃からコンクリートについて研究していましたが、さらに視野を広げることができた出来事がありました。2015年にコンクリートの微生物によるひび割れ補修で世界をリードしているオランダのデルフト工科大学に留学したことです。シンガポール国立大学で学んでいた頃、デルフト工科大学のブリューゲル教授の微生物の補修技術に関する講演を聞いたのがそのきっかけでした。その後、大学教員となっていた私は、自分が研究している分野で世界をリードしているMicroLabのブリューゲル教授のもとで学びたいと思い、大学院生時代に聞いた講演の感想と学びたい熱意をメールで伝えました。その後、幸運にも受け入れOKのメールをいただくことができ、半年間の短期留学が決まりました。現地に行くと、研究室の学生達が「こんなことは通常有り得ないんだぞ!なんてラッキーなんだ。」と何度も言われました(笑)。そこで学んだ微生物を用いる補修技術が今の私の研究に繋がっていて、近年では社会インフラ材料学として既存のコンクリート工学以外の工学的アプローチを取り入れ、研究では微生物など幅広くいろいろな材料を扱うようになりました。
 コンクリートの中には鋼材が入っています。コンクリートのアルカリ環境下では鉄の表面は不動態被膜で覆われ、酸化しにくい状態になっています。しかし、時間が経つとコンクリートのひび割れからの塩分や二酸化炭素の侵入によって不動態被膜が破壊されてしまい、鉄筋が錆びてしまいます。さらに、腐食生成物の膨張によって新たなひび割れが発生します。そうやってインフラ構造物の鉄筋コンクリートはどんどん劣化していきます。それらを未然に防ぐための自己治癒によるひび割れ補修・腐食抑制技術が研究対象です。
 ひび割れ補修では、納豆菌の代謝によって析出する炭酸カルシウムが水分や酸素の供給源となる隙間を自動的で埋め、高い止水効果を得られます。一方、好気性微生物をセメントに練り混ぜることで溶存酸素量を低減し、鉄筋周辺を貧酸素状態にする方法が腐食抑制技術です。好気性細菌は温度・湿度の変化に強く、10~11までの高いpHにも耐えることができます。また、大きさが2~3㎛でコンクリート内部の空隙よりも小さいため、固まった後も死滅せずにひび割れ等から供給された酸素を消費することができます。この研究は2015年から始めたのですが、コンクリート内部の酸素拡散が腐食反応を律速することを証明することが難しく、論文が認められるまでに5年もかかりました。

研究内容(左:ひび割れ補修、右:腐食抑制技術)

 

先生のコンクリートの技術はどんなところで使われていますか?
 来年までに静岡市の海釣り公園の整備事業で試験施工を実施する予定です。自己治癒材の使用はコストアップもあるのですが、公共の建設事業には過去の施工実績が必要となります。ですので、新たな材料を造って世界で認められるような論文を出しても実際の構造物に使用された実績がなければ、なかなか社会実装するのは難しいのです。今回の試験施工に続いて実構造物での施工実績を増やすために、広く情報を発信することが重要だと思っています。

今後の展望は?
 これまでの研究成果を踏まえて、地域ごとの材料・環境の違いを考慮して、自己治癒材の効果的な適用方法を研究したいと思っています。特に、地球温暖化や異常気象等による環境条件の変化はコンクリートの劣化に大きな影響を与えるので、より効果的な補修材料を模索したいと考えています。

※本記事は愛媛大学インターンシップの一環として作成されました。