工学部教育貢献賞

工学部教育貢献賞推薦書
コース名:電気電子工学コース
推薦対象者:尾﨑 良太郎 職名:准教授
推薦者(コース長):岡本 好弘

表彰の対象となる教育活動の内容と推薦の理由

 学生の学習意欲を向上させることは、大学における教育・学生指導の大きな課題のひとつである。教員にとって、学生が自分の置かれている状況を十分に理解し、今後どう取り組むべきかをしっかり考えるよう指導することが重要であるが、教員の熱心な指導にも関わらず、成績が振るわない学生がおり、その中には自身が置かれている状況を十分に把握・認識できない者も少なくない。そこで、尾崎准教授は、大学が卒業生の成績などの学籍データを大量に蓄積・所有していることに着目し、それらを活用することで、学生が自身の単位取得状況の良し悪しをより実感できるのではないかと考えた。つまり、天気予報ならぬ「卒業予報」という指標を発案し、卒業生のデータに基づいて、留年せずに4年間で卒業できる確率を示す指標を作成した。その取り組みは、平成29年度の愛媛大学教育改革推進事業(愛大教育GP)に採択されている(課題名「ビッグデータを利用した指数「卒業予報」およびカスタマイズ可能な出席管理システムの開発」)。

 愛大教育GPを通じて、尾崎准教授は技術職員と協力して、電気電子工学科に在籍した過去8年分の学生(約650名)の単位取得状況を調べ上げ、独自の指標「卒業予報」を作り上げた。「卒業予報」により、修学支援システムの全学GPAから、現役の学生が4年間で卒業できる確率を提示することができ、現在の修学支援システムをそのまま利用できるよう工夫されている。そのため、他学科・他学部への汎用性も高く優れた指標である。学科内の教員からも「学生指導時に積極的に利用したい」などの好評を得ている。実際に電気電子工学科では、「卒業予報」を履修指導などで試用し、学生から、過去の実績データということで説得力があり、頑張らないといけないという実感が湧いたという声を聴くことができた。また、成績が振るわない学生ほど、4年で卒業できる確率を甘く見積もっており、楽観視していることも明らかとなった。このように「卒業予報」を利用した学生指導は、具体的で明確なデータを提示できるため、目覚しい教育効果を挙げている。また、この「卒業予報」の成果は、様々な業務において、教職員が過去の事例やデータに基づき、より効率的かつ効果的な対策を取ることの大切さを示した良い例であるとも言える。一方、愛大教育GPでは、技術職員と協力して、ICカードによる出席確認用の独自のソフトウェアならびに出席管理用サーバーの開発にも取り組んでおり、今後のさらなる展開を期待している。

 以上のことから、対象者の活動は、工学部の教育ならびに学生指導の今後の発展に大きく貢献すると考えられ、尾崎良太郎准教授を、工学部教育貢献賞にふさわしい人物として推薦いたします。