工学部教育貢献賞

工学部教育貢献賞推薦書
コース名:機能材料工学コース
推薦対象者:田中 寿郎 職名:教授
推薦者(コース長):藤井雅治(機能材料工学コース長)

表彰の対象となる教育活動の内容と推薦の理由

 平成8年に発足した機能材料工学科・コースの教育・研究の対象は、金属、半導体、セラミックス、ガラス、高分子、複合材料など多岐に及んでいる。本学科の教育内容は、これらの多様な材料を微視的構造から特徴付け、機能の発現機構、高機能化・多機能化する方法を理解するということを基本として、材料科学・工学(Materials Science & Engineering)を学ぶものとなっている。このような広い分野を多方面から学ぶためのカリキュラムは他大学の材料系の学科と異なり、基礎から応用までのかなり広い分野を網羅したものになっている。そのため学科・コースの教育に関して多くの試みを行って来た。その中で田中寿郎先生は、本学科発足の早い時期から、特に基礎教育の改善に取り組まれ、3つの大きな教育方法・教育改革を実現してこられた: (1)本学科のみならず工学部全体での工学の基礎に関する実験的授業の立ち上げ(基礎工学実験)、(2)e-ラーニングを用いた入学前教育及びリメディアル教育の推進、(3)工学系学生に対する新たな技術英語教育法。

 基礎工学実験に関しては、現在の工学教育にも関連することであるが、当時新入学生の理科離れや学力低下の問題が言われ始めた時期であり、工学部においても関連する理・数系の科目に対して、『勉学意欲が感じられない』『積極性がない』『知識を活用できない』などの問題点が指摘されていた時期に立ち上げたものである。田中先生は、これらの原因は、高等学校までの教育によって学生は様々な紙の上の知識は学んでいるが、実態と関連づけて理解していない、従って知識がただの記憶になっている、と指摘され、さらに、大学に入るとより抽象的かつ概念的な授業が多いので、ますます興味を失うと推測された。この問題を解決するには、知識を実態に即したものとする、あるいはそのための方法を学ぶことが大切であるとして、大学初年次に体験させるための参加体験型入門実験として企画され、機能材料工学科において実施された。以後平成14年度より、本学工学部の機械工学科、電気電子工学科(平成18年まで)、機能材料工学科、応用化学科(平成16年度までは『物理学実験入門』として開講、平成17年より『物理学実験入門』に『化学実験入門』を組み入れて実施)において初年時の実験科目として開講され現在まで続いている。本授業はその有効性が評価され平成19年度日本工学教育協会賞を授与されている。現在この科目は本学の実験実習教育センターにおいて実施されており、同センターでは、この科目のみならず、文部科学省の『サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト』や平成25年度からは宇和島東高校の『スーパーサイエンス・ハイスクール』における『基礎科学実験』の実施などを通して、地域の初等教育にも貢献している。

 e-ラーニングについては早くからこの方法の導入を検討され、「e-ラーニングの入学前教育への活用」や「授業支援システムに携帯電話を利用する」などの新しい教育方法を開発された。前者に関しては現在も機能材料工学科で有効活用し成果を上げている。

 工学系の英語活動では、『平成25年度愛大GP』にて、「教養英語に接続するESPに基づいた革新的工学英語教育プログラムの開発」として採用されるなど、当学科での技術英語の取り組みで多大な貢献をされている。

 この他、田中先生は学部での「放射線工学基礎理論」、大学院博士課程前期での「Technical Writing in English」を導入され、これらは工学部(系)全体での履修科目となっている。さらに、田中先生は大学院の授業でもmoodleを積極的に利用され、学生からの評価も高い。

 さらに田中先生は工学部教務学生委員長、工学部FD委員長などを歴任され、平成24年度より共通教育センター長を勤めておられる。その間先生は全学からの要請や工学部教育の高度化への対応のために学科のみならず学部に対しても多くの貢献をなされてきた。

 工学部並びに機能材料工学科・コースの教育に関する、これらのご貢献を称え、本年度の工学部教育貢献賞の候補者として、田中寿郎先生を強く推薦する。