研究室訪問

 今回は環境建設工学コースの森脇亮(もりわき・りょう)先生の研究室を訪問しました.先生は,東京工業大学工学部を卒業後,同大学にて博士号を取得されました.その後,平成19年に本学環境建設工学科に准教授として着任され,水環境工学研究室の教員としてご活躍中です.今回は先生の研究内容についてお話を伺いました.

まずは,先生の研究テーマについて簡単に教えてください.

 専門としている研究分野は都市の気象や水文現象です.簡単にいえば,都市化によるヒートアイランド現象,雨の降り方の変化,風の道などに関する研究を行っています.また,地表に降った雨がどのような経路で川や海に流出していくかなど,地下水流動に関することにも興味を持っています.

都市気象というと土木からかけ離れた内容であり、土木なのにどうして気象を研究するのですか?

 愛媛大学の周辺には弥生時代の貴重な遺跡がたくさん存在し、この辺りが人間にとって住みやすい環境だったことが伺われます。このように昔から都市というものは存在していましたが、その規模は小さく自然と共生し続けることができました。一方、現代社会は文明と科学技術の飛躍的な進歩によって大変便利になりましたが、あまりにも環境に与える負荷が大きくなり、自然破壊、環境汚染が深刻化しています。私は子供の頃から環境問題に関わる仕事に取り組みたいと考えており、環境を破壊する土木事業に飛び込んでこそ環境保全に関わる最前線の仕事ができると考え、大学進学時に土木工学科を選びました。土木工学こそあらゆる環境問題に対して真摯に取り組まなければいけないのです。都市化の進展に伴ってヒートアイランド現象や大気汚染が顕在化しています。道路を作ったり、海を埋め立てたり、我々の生活を便利にする公共事業は多くありますが、これらの事業が大気環境にどのような影響を与えるのか、そのインパクトを評価し予測することが必要です。このような研究を学生の皆さんと共に進めることで、環境問題に対して貢献していくことが出来ると考えています。

具体的にはどのような研究をされているのですか?

 私の研究室では、ヒートアイランドの状況把握や都市-大気間のエネルギー・物質輸送のメカニズムを解明するための現地観測を行ったり,「風の道」を提案するためのスーパーコンピュータを用いたシミュレーションなどを行っています.

「風の道」についてもう少し詳しく教えてください.

 建物配列や道路形状など街並みを調整することで「風の道」を整備し,郊外の清涼な空気を誘導することで良好な大気環境を創出することが注目されつつあります.環境先進国ドイツのシュツットガルト市では,清涼な気流を市街地に導入するため,道路,公園,森林,建築物などの再配置を含めた都市計画が策定され一定の成果を挙げています.日本においても,主にヒートアイランド解消を目的として,関東や関西,中部,九州北部などの大都市で「風の道」を確保する計画が進められてますが,四国の都市ではまだ関心が薄いようです.四国の多くの都市は地形条件的に丘陵や山地や海に面しているために,海陸風や夜間の冷気流の影響を受け,「風の道」を整備する上で好条件がそろっています.自然と調和した住みよいまちづくりのため,「風の道」の実現を目指しています.

最後に学生さんへのメッセージをお願いします.

 学生さんと接していてよく感じるのは,「受け身」の学生さんが多いということです.遠慮しているだけなのかと思っていたら,単に何も考えていないということが多い.仕方無いので,こちらから研究テーマや進め方を提案するのですが,その後も「考えない」癖が抜けません.教員の指導どおりに研究を進めたって,それは単なる機械的作業であって,ちっとも面白くありません.物事を創造するという知的作業では無いからです.せっかく大学に来ているのだから,自分の頭を使うことをぜひ学んで欲しいです.慣れていないうちは難しいことだと思いますが,努力すれば誰にでも出来るようになります.自分の頭が使えるようになると,知的創造がとても楽しくなります.それこそが,世間に求められていることであり,自分にとっても大きな糧になります.私もそのためのサポートを惜しみませんので,ぜひチャレンジしてもらいたいと思っています.

本日はどうもありがとうございました.

 こちらこそ,どうもありがとうございました.