研究室訪問

 今回は環境建設工学コースの安原英明(やすはら・ひであき)先生の研究室を訪問しました.先生は,京都大学大学院工学研究科修士課程を終了後,アメリカに渡り,ペンシルバニア州立大学エネルギー・地球環境工学科でPh.D.を取得されました.その後,平成17年に本学環境建設工学科に助手として着任され,現在は大学院理工学研究科生産環境工学専攻(環境建設工学コース)で准教授としてご活躍中です.今回は先生の研究内容やアメリカでの留学経験についてお話を伺いました.

まずは,先生の研究テーマについて簡単に教えてください.

 私の研究テーマは,「岩盤力学」という岩盤の挙動についての研究が主になっています.特に,熱・水・力学・化学の相互作用現象が,岩盤に及ぼす影響について詳細な検討を行っています.

難しそうですが,実際にはどのような問題を扱っているのですか?具体的にお願いします.

 熱・水・力学・化学の相互作用と聞くと,確かに難しそうだと思います.実際,研究を行っている私も日々難しいと思って研究を進めています.このような複雑な問題は,さまざまな工学的課題に見られます.例えば,高レベル放射性廃棄物の地層処分を実施する際の処分施設近傍の岩盤の性能評価であるとか,二酸化炭素の地中貯留問題や,石油・天然ガス貯留層や地熱発電における地中からのエネルギー回収であるといった,地下深い環境で対処する問題に深く関わってきます.最近では特に,放射性廃棄物の地層処分を想定した岩盤の透水性に関する研究に重点を絞っています.扱っている現象は単純なものではないですが,研究室の学生さんたちは自主性を持って一生懸命研究を行っているので,私も日々刺激を受けながら楽しく研究を進めています.

話は変わりますが,先生はアメリカ留学経験をお持ちですが,そのきっかけと留学先での思い出を教えてください.


「ボストン郊外にて」

 アメリカには2001年から2005年まで約4年半いましたが,留学するきっかけは,日本の「縦社会」が嫌いであったことが一番の原因です.日本を離れるために大学1年生のころから英会話学校に通って留学するまで,計5年間程度英会話を勉強しました.それでもアメリカに渡って1年程度は本当に英語で苦労しました.アメリカに渡った当初は,日本に帰るつもりは全くなかったのですが,いつの間にやら,もろもろの都合により,日本に帰国することになりました.愛媛大学でキャリアをスタートさせましたが,幸か不幸かあまり日本の「縦社会」を感じていません.

 アメリカでの思い出といわれるといくつもありますが,例えば2004年にボストン郊外で行った野外調査は,非常に寒くてつらかったのでよく覚えています.-20℃以下の極寒の中,ボーリング調査といわれる地盤の調査に付き合ったのですが,あれほど寒い経験はこれまでなかったですし,これからもないことを祈ります.

 あと,国際学会や海外課外授業などで,指導教員にいろいろな国につれていってもらいましたが,中でも2003年のアイスランドはとても良い思い出となっています.アイスランドは日本より激しい火山国で,国土のほとんどが火山です.いろいろな場所を見学しましたが,世界最大の露天風呂「ブルーラグーン」はとても楽しかったです.広大な景色と乳白色の温泉は,つかれた体を芯から癒してくれました.機会があればもう一度入ってみたいです.


「世界最大の露天風呂:ブルーラグーン」

たいへん貴重な経験ですね.先生は留学中,学生の指導もされた経験があるとのことですが,日本とアメリカの学生の違いについて教えてください.

 一言でいうと,積極性が全く違います.アメリカの場合,例えば,講義をしていてもわからないことがあれば,手を挙げて質問をしますが,日本の場合皆無です.私が在籍した大学院では,留学生の割合が半分程度いましたので,いわゆる人種のるつぼでした.そのような多種多様な環境が刺激となり,学生の積極性につながるのだと思います.愛媛大学もいろいろな国からの留学生が増えて一層国際化されることを期待しています.

最後に学生さんへのメッセージをお願いします.


「研究室での指導風景」

 最近,日本人の海外留学数が年々減ってきています.これは,日本における閉塞感と,海外にいく余裕がないことなどが原因となって,学生が内向き志向になっているためだと思います.海外に行けば,行くだけで絶対に何か学べます.文化の違いを肌で感じることは,将来への糧となります.海外で行ったことは,日本で同じことを行ったことと比較して何倍もの達成感を得られます.今後,高齢化がどんどん進み,国力が下がっていくことは間違いありません.このまま,世界における地位がどんどん低下していく日本で良いのか,だめだと感じているのであれば,若いうちにどんどん海外に出ていって,「外の環境」を学んで欲しいと思います.


本日はどうもありがとうございました.

 こちらこそ,どうもありがとうございました.