研究室訪問

 こんにちは.工学部広報委員の機械工学科の豊田です.今回は機械工学コースきっての元気人高橋学先生の登場です!高橋先生は,毎日,研究,教育に体当たりで打ち込んでおられます.それでは,普段されてるご研究,ご趣味などのインタビューをしていきたいと思いますのでよろしくおねがいします.
 高橋先生は長岡技術科学大学大学院工学研究科博士課程(材料工学専攻)を修了後,住友金属テクノロジー(株)を経て,平成7年4月に愛媛大学工学部機械工学科助手として着任されました.現在,助教授として機械工学コースの研究教育を引っ張って行く中心の存在となりつつあります.

はじめに高橋先生の研究分野について誰にでもわかるように教えてください.

 今取り組んでいる主たる研究分野は,材料の強さや壊れるしくみについて研究しています.材料の強さを知っておかなければ構造物を設計できないですよね.また,材料の壊れるしくみがわからないといつ何時に壊れてしまうか予測ができないですよね.だから安全で壊れにくいものをつくるために,ものを壊しています.また,最近では生体力学(バイオメカニクス)の研究も始めました.

ものを壊すっていったいどんな研究テーマなのですか?具体的に教えてください.



            接触試験の外観写真

 みなさんは”セラミックス”って聞いたことありますか?そう,みんなが使っているお茶碗や花瓶などはオールドセラミックスと言われるものです.それをもっと高い品質管理のもとで工業用材料として造った材料を”ファインセラミックス”といいます.ご存じのように大変硬くて,強くて,軽い材料ですが,もろいという欠点があります.その欠点がセラミックスの利用拡大の足かせになっていました.しかしながらセラミックスのすばらしい機能を使って様々な構造部材に利用されるようになってきました.たとえば,セラミックスと金属を接合した電子基板,軸受け,加工用刃物,燃料電池セルなど.ただし,セラミックスを構造部材に用いる際に他材料との接触は避けられません.その際,接触部にはヘルツ応力という力が分布し,セラミックス内に潜在する欠陥を起点に破壊する事象が起こっています.我々は局所応力分布と欠陥寸法から破壊基準を見出し,材料開発や設計の指針を構築する評価体系を研究しています.そのためには,ものを壊して破壊のメカニズムを探ることが重要となってきます.

破壊というと失敗のイメージがあるのですが....

 ”形あるものいつかは壊れる”という言葉を聞いたことがありますか?我々の研究分野では当たり前のことですが,一般の方にはあまり理解いただけないようです.安全という言葉を日本人に聞くと「100%壊れることがない」といいます.一方,欧米人に聞くと「いくらか破壊するリスクを含んでいる」といいます.科学技術は”未知への挑戦”です.失敗は全て成功への過程だと考えれば,世の中に失敗という言葉はなくなるでしょう.ただし,同じ失敗を繰り返すのはダメですけど.....

うーん.なんだか難しい話になってきましたので,ちょっと柔らかい話題に移りましょう.先生の学生時代の様子を教えてください.

 はい,私は南国生まれの南国育ちです.ところが大学は,一昨年に地震のあった新潟県長岡市にあり,7年間過ごしました.初めての雪景色,窓の外をぼたん雪がどんどん落ちてきて1時間ほどで50cmを超えてしまい驚いたことを今でも鮮明に覚えています.小学校からずっと野球ばかりしていましたので,大学でも夏は準硬式野球部に入って全国大会にも出場しました.冬はやはりスキーですね.ちょうどスキーブームの絶頂期.夕方,研究室を見渡して目が合う同級生と「じゃあ,今からナイタースキーね.」って30分ほどのスキー場に通っていました.当時の年間滑走日は30~40日ほどあり,スキーにのめり込んでいました.長岡市は田中角栄,山本五十六,戊辰戦争の河合継之介,そして小泉前総理も話した米百俵の地,また,花火も3尺玉が広がるすばらしい街でした.大学は丘にそびえ,私にとって第2の故郷ともいえます.

ところで先生のご趣味は何ですか?

 私は身体を動かすことが大好きです.野球,スキー,水泳,マラソン,テニス,最近はトライアスロンにはまっています.4年ほど前から松山市中島町で開催されているトライアスロン大会にも参加しています.大学以外の幅広い年齢層の方と知り合うことができ大変充実しています.

最近,新しい分野へも挑戦されているということでしたが?



          医療デバイスの実験風景

 はい.生体力学という分野に手をつけ始めました.これまでは大変硬いセラミックスでしたが,今度は大変柔らかい生体軟組織といわれるものの力学的特性を調査しています.たとえば肝臓や心外膜などです.新しい医療デバイス開発を本学医学部の先生と共同研究しており,よいデバイスを開発するためにはまず,生体をよく知ることが必要となってきます.我々は力学的な観点から医学分野に対してどのようなアプローチをすればよいのかを模索しております.

最後に若い方々にメッセージをお願いします.

 近年の遊び道具のほとんどはブラックボックスになってしまい,スイッチを入れるだけ.壊れても買い換えた方が安いという具合に頭どころか,手も動かさなくなってきています.ものが壊れたときがチャンスです.ぜひ分解してみましょう.どんなしくみで動いていたのか.何が原因で動かなくなったのか.意外と半田コテ一つで直せたりしますよ.与えられるのではなく,興味を持つことから始めましょう.失敗はないのだから......