愛媛大学工学部
研究室訪問
 今回は応用化学コースの宮崎隆文(みやざき・たかふみ)先生の研究室を訪問しました。先生は、熊本大学大学院理学研究科修士課程を修了後に一般企業に就職されたのですが、一念発起して学位取得のために熊本大学大学院自然科学研究科博士後期課程に再入学、同大学から博士号を授与されました。学位取得の後、岡崎国立共同研究機構分子科学研究所にて日本学術振興会の博士研究員を経て、富山大学理学部化学科助手となり、現在は愛媛大学大学院理工学研究科物質生命工学専攻(応用化学コ−ス)で准教授としてご活躍中です。今回は先生の研究内容についてお話を伺いました。

まずは、先生の研究内容について簡単に教えてください。

 身の周りのもの(物=物質)にはいろいろな性質があります。例えば、硬いものや柔らかいもの、電気を流しやすいものや電気を流さないもの、白いものや黒いものや透明なもの、変化しやすいものや変化しにくいものがあります。化学ではこれらを“物性”という言葉で呼んでおり、これらの物性の起源を調べる研究をしています。物質は原子や分子が集まってできており、それらを結び付けているのは原子核と電子の引力です。その電子がどのように物質内に束縛されているか(これを“電子構造”といいます)を調べて、物性との関わりを明らかにしようとしています。また、得られた情報を基にして「新たな特性を持っている物質の設計や合成」に結び付くことを期待しています。

具体的には、どのようにして研究活動しているのですか?

 先に述べたように、物性研究では物質の電子状態を知る必要があり、研究室にある高分解能光電子分光装置が主力となっています。この装置は私たちの研究室の日野先生が都合十年ほどかけて独自に組み上げられたもので、その原理は光電効果と呼ばれる現象(ある一定のエネルギー以上の光が物質に照射されると物質の表面から光電子が飛び出すこと)を基本原理としています。光電子は物質内でどのように束縛されていたかの情報を持って飛び出してきますから、その電子の速さを解析すれば、物質内でどのように結合していたのかが分かります。研究対象となっている物質は、分子性有機物質、層状無機物質、有機−無機複合錯体など多種多様で、おもしろい物性を示す物質であれば何でもあり!という感じですね。現在は、メタンを転換してエチレンをつくる選択酸化触媒、籠状の炭素構造体に金属やクラスターを取り込んだ内包フラーレン、電子供与性分子と電子受容性分子から成る有機電荷移動錯体の物性と電子状態について研究しています。

先生の研究活動を支えている事柄などありましたら、教えてください。

 私の研究では普通の化学の研究室とは違い、白衣を着て試験管やビーカーを振っている姿はあまりなく、むしろ作業衣を着て実験装置と対面していることが多く見られます。装置を順調に動かすようにするのはなかなか大変で、時には床に座り込んだり、配線や配管をしたりすることがあるので作業着姿でいることになるのです。また、研究室にある装置を使用するだけではなく、必要な実験結果を得るために国内外の研究所に出向いて研究活動もします。私の場合、自然科学研究機構分子科学研究所(愛知県岡崎市)や高エネルギー加速器研究機構物質構造研究所(茨城県つくば市)などの国立共同利用研究施設に行って実験をしています。これらの共同利用施設では、国内外からの優れた研究者が集まって最先端の研究をしています。いろいろな研究者や技術者との共同実験を行い、彼達との議論を通して研究が進んでいきます。私にとって、これまでにいろいろな実験設備を使えたことも貴重な経験ですが、多くの研究者や技術者と知り合えたことが最も価値のある財産かもしれません。

最後に、学生さんへのメッセ−ジをお願いします。

 社会に出るといろいろな困難や一人では解決できない難題にぶつかる時があります。最終的な判断は自分の責任で行う必要があります。しかし、他人のいろいろな考えを聞いたり、互いに議論したりする中で、一人では考えつかなかった解決法を導き出せることもあります。全てが順風満帆なら良いのでしょうが、現実はそう甘くはありません。立ちはだかる壁を乗り越えるためには、一人で正面からぶつかるだけでなく、迂回したり、場合によっては協力者の助けが必要になったりします。是非、本音で話せる友人や先人(輩)を見つけて下さい。勿論、自分を切磋琢磨する努力も忘れずに!




Home Home
Copyright 2005 工学部 All Rights Reserved.